たくまるの日記

中小企業診断士試験合格のエンジニアが法人向けにITの話題を投稿します。

「コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった」を読んだ感想

どんな本か?

GWを利用して以前から気になっていたコンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だったを読了したので感想を記したいと思う。昨年のGWは中小企業診断士試験の学習に明け暮れていたので、今年は本を読める時間があるくらいゆったりと過ごせた。

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コンテナ物語の著者、マルク・レビンソン氏はThe Economistの金融・経済担当エディターを務めた人物である。米マイクロソフト社の創業者ビル・ゲイツ氏からの推薦の言葉がAmazonに書かれているが、コンテナが国際物流とサプライチェーン、ひいては企業経営にどのような影響をもたらしたかがわかりやすく書かれている。ビジネスマンの教養として読んでおくべき本だと考える。

この本から学んだこと

コンテナのアイデアは以前から存在していた。

コンテナは20世紀後半にアメリカの起業家マルコム・マクレーンによって本格的に利用されるようになった。従来の混載方式に比べたコンテナのメリットは、 1. 港湾やトラックターミナルでの荷物の積み替え(荷役作業)が不要になり人件費が削減されるだけでなく、その間船を停泊させておく必要もなくなった。 2. 荷物の破損や盗難が減少した。 3. 荷物の到着時間が正確になったため、製造工場において在庫の削減につながった。 4. 輸送コストが下がり、製造工場の立地が必ずしも港湾に近い場所でなくても良くなった。

荷物をバラではなく箱にまとめて船舶に積み込むアイデアは以前から存在した。マルコム・マクレーンは元々トラックの運輸業を営んでいたため、港湾での荷役作業ではなくトラックや鉄道も含めた複合一括輸送プロセスを目指していた点が、他の経営者とは異なっていた。事業のためには借入も厭わず、積極的にコンテナ船、専用トラックや港湾の整備に投資した点も成功の秘訣だったと感じた。

コンテナ導入に伴って仕事がなくなる港湾労働者には保証が行われた。

コンテナ登場以前の港湾では、沖仲仕と呼ばれる労働者が手作業で積み荷を船倉に積み込んでいた。コンテナの発明に伴ってこのような積み込み作業はクレーンで容易に行えるようになるため、沖仲仕の仕事は極端に減ってしまった。沖仲仕達はストライキを決行して抵抗したため、賃金保障や年金制度の導入が図られた。 しかし、いったんコンテナを受け入れた後に残ったのは苦しい力仕事だったため、沖仲仕側から機械化を求める逆転現象が発生していた。

コンテナは海運業界だけで発生したイノベーションではなく、陸運や鉄道にも影響を与えた。

コンテナの大きさや耐荷重、船や貨車へのロック機構が国際基準として統一されると海運業だけではなく陸運業や鉄道業でもコンテナの活用が浸透してきた。それに伴い、トラックや鉄道から船に荷物を積み替える際に発生したしていた荷役コストが大幅に削減され、コンテナのメリットが最大限に発揮されるようになった。同時に、物流コストが大幅に下がって、正確性に荷物が届くようになったため、サプライチェーンがグローバルに展開されるようになった。

まとめ

コンテナは沖仲仕の仕事を消滅させ、それ以前の海運業界のシェアを根底から変えてしまう破壊的イノベーションだったと言える。イノベーションの犠牲になった事業者や労働者がたくさんいたと思われるが、それでもコンテナが普及した背景には、企業の利益追求と生産量の増大による規模の経済性があったのだろうと思う。