マイクロソフト社がチャットアプリケーションのDiscord買収を検討
買収交渉のニュース
2021年3月23日のニュースで米マイクロソフト社によるチャットアプリケーションのディスコード社(Discord Inc.)買収交渉中が報道されました。最初に報道があったのはThe Wall Street Journalのようです。私個人としては最近ディスコードを使い始めるましたし、マイクロソフトのTeamsおよびSkype共に使う機会が多いので、ディスコード自体がこれからどうなるかとTeamsやSkypeとの住み分けをどうしていくのかについて注視しております。
マイクロソフトは昨年の8月にTikTokの買収を交渉していると報じられたり、2月にキュレーションアプリのPinterestの買収を検討していると報じられたりしていて、このところ買収話をよく耳にします。今回のディスコード買収にはどのような目論見があるのか勝手に考察してみます。
事業の多角化
過去に試みていたTikTokやPinterest買収をから明らかなように、マイクロソフトは一般消費者向けのサービスやクリエーター同士のネットワークに参入したいと考えているようにです。ソフトウェア開発者同士のコミュニケーション基盤になっているGitHubを買収したのもその戦略の一環であると思われます。
Windowsというパソコン向けOS市場では圧倒的なシェアを持つマイクロソフトですが、所数の大企業や政府が市場をけん引する時代が終わり、一般市民がユーザー生成コンテンツ(UGC)としてコンテンツを生み出していく世界に成長性があると予想しているのかもしれません。
ライバルのGoogleやFacebookはYouTubeやInstagramといったSNSサービスを所有していて、そのサービスの中では発信力のあるインフルエンサーを中心に独自の文化やネットワークが構築されています。マイクロソフトは大きく水をあけられている状況です。
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)に照らし合わせて言えば、OS事業で得た収益を金のなる木として、買収したSNS事業(問題児)に投資して将来のキャッシュフローが見込める花形に成長させようとしているのかもしれません。
クラウド事業とのシナジー効果
マイクロソフトはクラウドコンピューティング基盤としてAzureを展開していますが、ディスコードを買収することによりAzure基盤の利用ユーザー数が増えてシナジー効果が期待できそうです。どういう事かというと、現在ディスコードはGoogle Cloud Platform(GCP)を使っていることは過去にGCPで発生した障害から明らかです。
買収によってマイクロソフトの事業となれば、GCPからAzureに移行することによってインフラにかかるコストが低減されるだけでなく、ディスコードのサービスにAzureを最適化することによりコストおよび機能面で向上が見込まれます。
また、Azureを基盤とした他のサービスとも連携することによる新たな価値が生まれるかもしれません。クラウドコンピューティングも携帯電話サービスと同様にネットワーク外部性があり、利用ユーザー(事業者)の増加に伴って便益の向上が見込まれるようです。
今後への期待
コロナ禍によるリモートワークの普及でチャットアプリケーションは仕事に欠かせないインフラとなりました。マイクロソフトが過去にスウェーデンのスカイプ社からSkype事業を買収した際は、従来のSkypeユーザーから反発もあったようですが今回のディスコードはそうならないように、買収が成立した際にはうまく利便性を損なわないように進めてもらいたいです。